一次創作絵・文サイト。まったりグダグダやっとります。腐要素、その他諸々ご注意を。
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「これで揃ったな」
「おう」
目の前に茶菓子、そして隣に智光が座るのを確認して、俺は一際大きく咳ばらいをする。
「第12回、ゲーム大会の開始だ!!」
ドンドンパフパフ、といういつもの盛り上がりが無いな、と思っていると、智光の容赦ない鉄拳が飛んできた。
それを直前でかわす。相変わらずツッコミのやり方が強引な奴だ。
「…バカヤロウ。二人しかいねぇじゃねーか」
「すまん…今日は皆予定があるらしく、お前しか集まらなかったんだ」
どうせ俺は暇人ですよ、と溜息をつく智光。そんな彼を横目に、本体の電源を入れた。
二人とも好んでいる格闘ゲームのパッケージを開けていると、背後で智光が不機嫌そうに唸る。
振り返ると、見慣れた仏頂面が視界に入ってきた。
「…それよりさあ、新作やんね?ここ来る途中で買ってきた」
そう言って智光が持ち出してきたのは、ホラーゲーム。
昭和の日本が舞台で、独特の雰囲気やプレイヤーの意表をついた恐怖演出から、俺達ゲーマーの中でも特に怖いと有名なものだ。
なにも冬にやらなくても良いとは思うが、好きな作品だから仕方がない。
「死んだ交代は無いとして…あ、驚いた交代は?」
「それも無いだろう」
「…そーだよなあ…」
俺と智光の二人でゲームをする時は基本的に無言、または他愛もない雑談をしながらサクサク進めていくのが普通だ。
それがどんなゲームであろうと関係ない。というか、俺達二人が揃えば積むことも皆無と言える。
「んじゃ、時間交代で」
「わかった」
公平にじゃんけんで操作の順番を決めた結果、先行は俺になった。
早速起動させると、不気味なBGMと共に画面にタイトルロゴが現れる。
まだ二人とも初見なので初めからプレイすることにする。難易度はひとまずノーマルに設定した。
それ以上の難易度はクリア後でないと出現しない為だ。
ムービー部分では、智光のバリバリと煎餅を食う音が気になったが、それでも見入っていた。
「さて、ここからだな」
「ふむ……」
ムービーが終わり、唐突に操作画面に移った。
ホラーではよくあるが、視界が狭く、暗い。
これも今までのシリーズと同じ、いやそれ以上におどろおどろしい演出がなされていると思った。
まあ、今が休日の昼で、部屋には暖かな陽が差し、更に隣の智光が今度は茶を啜っているという台なしのシチュエーションを除けば、の話だが。
しばらくマップを探索していると、突如電話が鳴って、主人公が驚くというシーンが入った。
それにシンクロするように、俺の携帯も鳴る。
「…お前、ホントに微動だにしないよな。感心するよ」
見ずともわかる。智光の仕業だ。
この程度のことで俺がリアクションをとるとでも思っていたのだろうか。
それなら、随分と甘く見られたものだ。
「アホ、余計な真似せんでええ。気が散るわ」
イラッとしたら、大阪弁が出てしまった。
いつもは標準語なのだが、やはり最近まで向こうに住んでいただけに…特に怒りを感じた際に出てしまうことが多い。
正直言うと俺が喋りたい時に、というのもあるが。
それを知っている智光が、小さな声で悪かったよと謝るのが聞こえた。
それからしばらく進めていると、あらかじめ設定しておいた交代時間を告げる携帯のタイマーが鳴った。俺としてはとても良い所だったから残念だったのだが、ポーズをかけて智光にコントローラを渡す。
「期待しているぞ」
「任せとけ」
智光にコントローラを握らせて対等に渡り合えるのは、せいぜい俺くらいだろう。
智光は腕をまくり、自信に満ち溢れた表情でポーズを解いた。
だが、その瞬間。
「うおっ…!?ちょっ…お、まっ…!!」
画面には幽霊の顔がドアップで映し出された。
ボタン連打で難を逃れたものの、もう一度ポーズをかけた後、智光は肩で息をする。
まさかこんなタイミングで一時停止しておくとは思っていなかったとでも言うように、眉に一層濃い皺をつくって、俺を睨む。
「びびったやろ」
「…びびってねえ」
「嘘はあかんわ。思い切り叫んどったやないか」
「お前はいちいちやり方が汚ぇんだよ。眼鏡かち割んぞ」
いかにも不機嫌そうな顔で、俺の胸倉を掴む。
しっかりと俺を捉えた右手は、拳が握りしめられている。
今にも殴られそうだ。本当に割られたことがあるから、あながち余裕ぶってもいられない。
まあ、その時は俺も智光の顔面をグーでいったから、おあいこなのだが。
理由はどうあれ、智光が驚いたという事実は変わらない。一応宥めてから、振り払う。
「驚いた交代やから…ほれ、さっさと貸さんかい」
「って、それ生きてたのかよ!!」
間髪入れない智光のツッコミが、脳天を直撃する。眼鏡は無事だったが、しばらく頭が痛かった。
「お前…自分がやりたかっただけだろ…。ったく、俺が買ったのによ…」
呆れたように呟く智光の愚痴をスルーして、俺はゲーム内に意識を集中させた。
結局その日は、夜になって智光が渋々帰るまで、俺の独壇場だったような気がする。
だが中盤までは進んだので良しとする。
今日は徹夜するとして、このペースでいけば余裕を持ってクリア出来てしまうだろう。
「…そういえば、また返すのを忘れたな」
智光に借りっぱなしにしていたゲームの山が視界に入って、思い出す。
そろそろいい加減に返さなくては。でもそこまで催促されてはいないし…いや、されたような気もしなくもないが。
まあ、次の機会で良いか。
自己解決したところで、俺はまた画面に視線を戻し、ゲームを再開し始めた。
今回のゲームも返すのを忘れて、いい加減にしろと智光にキレられるのは、また別の話だ。
*
冬に書いたものでした。秀吉は基本他人に関心ないだけなんです…たぶんw
「おう」
目の前に茶菓子、そして隣に智光が座るのを確認して、俺は一際大きく咳ばらいをする。
「第12回、ゲーム大会の開始だ!!」
ドンドンパフパフ、といういつもの盛り上がりが無いな、と思っていると、智光の容赦ない鉄拳が飛んできた。
それを直前でかわす。相変わらずツッコミのやり方が強引な奴だ。
「…バカヤロウ。二人しかいねぇじゃねーか」
「すまん…今日は皆予定があるらしく、お前しか集まらなかったんだ」
どうせ俺は暇人ですよ、と溜息をつく智光。そんな彼を横目に、本体の電源を入れた。
二人とも好んでいる格闘ゲームのパッケージを開けていると、背後で智光が不機嫌そうに唸る。
振り返ると、見慣れた仏頂面が視界に入ってきた。
「…それよりさあ、新作やんね?ここ来る途中で買ってきた」
そう言って智光が持ち出してきたのは、ホラーゲーム。
昭和の日本が舞台で、独特の雰囲気やプレイヤーの意表をついた恐怖演出から、俺達ゲーマーの中でも特に怖いと有名なものだ。
なにも冬にやらなくても良いとは思うが、好きな作品だから仕方がない。
「死んだ交代は無いとして…あ、驚いた交代は?」
「それも無いだろう」
「…そーだよなあ…」
俺と智光の二人でゲームをする時は基本的に無言、または他愛もない雑談をしながらサクサク進めていくのが普通だ。
それがどんなゲームであろうと関係ない。というか、俺達二人が揃えば積むことも皆無と言える。
「んじゃ、時間交代で」
「わかった」
公平にじゃんけんで操作の順番を決めた結果、先行は俺になった。
早速起動させると、不気味なBGMと共に画面にタイトルロゴが現れる。
まだ二人とも初見なので初めからプレイすることにする。難易度はひとまずノーマルに設定した。
それ以上の難易度はクリア後でないと出現しない為だ。
ムービー部分では、智光のバリバリと煎餅を食う音が気になったが、それでも見入っていた。
「さて、ここからだな」
「ふむ……」
ムービーが終わり、唐突に操作画面に移った。
ホラーではよくあるが、視界が狭く、暗い。
これも今までのシリーズと同じ、いやそれ以上におどろおどろしい演出がなされていると思った。
まあ、今が休日の昼で、部屋には暖かな陽が差し、更に隣の智光が今度は茶を啜っているという台なしのシチュエーションを除けば、の話だが。
しばらくマップを探索していると、突如電話が鳴って、主人公が驚くというシーンが入った。
それにシンクロするように、俺の携帯も鳴る。
「…お前、ホントに微動だにしないよな。感心するよ」
見ずともわかる。智光の仕業だ。
この程度のことで俺がリアクションをとるとでも思っていたのだろうか。
それなら、随分と甘く見られたものだ。
「アホ、余計な真似せんでええ。気が散るわ」
イラッとしたら、大阪弁が出てしまった。
いつもは標準語なのだが、やはり最近まで向こうに住んでいただけに…特に怒りを感じた際に出てしまうことが多い。
正直言うと俺が喋りたい時に、というのもあるが。
それを知っている智光が、小さな声で悪かったよと謝るのが聞こえた。
それからしばらく進めていると、あらかじめ設定しておいた交代時間を告げる携帯のタイマーが鳴った。俺としてはとても良い所だったから残念だったのだが、ポーズをかけて智光にコントローラを渡す。
「期待しているぞ」
「任せとけ」
智光にコントローラを握らせて対等に渡り合えるのは、せいぜい俺くらいだろう。
智光は腕をまくり、自信に満ち溢れた表情でポーズを解いた。
だが、その瞬間。
「うおっ…!?ちょっ…お、まっ…!!」
画面には幽霊の顔がドアップで映し出された。
ボタン連打で難を逃れたものの、もう一度ポーズをかけた後、智光は肩で息をする。
まさかこんなタイミングで一時停止しておくとは思っていなかったとでも言うように、眉に一層濃い皺をつくって、俺を睨む。
「びびったやろ」
「…びびってねえ」
「嘘はあかんわ。思い切り叫んどったやないか」
「お前はいちいちやり方が汚ぇんだよ。眼鏡かち割んぞ」
いかにも不機嫌そうな顔で、俺の胸倉を掴む。
しっかりと俺を捉えた右手は、拳が握りしめられている。
今にも殴られそうだ。本当に割られたことがあるから、あながち余裕ぶってもいられない。
まあ、その時は俺も智光の顔面をグーでいったから、おあいこなのだが。
理由はどうあれ、智光が驚いたという事実は変わらない。一応宥めてから、振り払う。
「驚いた交代やから…ほれ、さっさと貸さんかい」
「って、それ生きてたのかよ!!」
間髪入れない智光のツッコミが、脳天を直撃する。眼鏡は無事だったが、しばらく頭が痛かった。
「お前…自分がやりたかっただけだろ…。ったく、俺が買ったのによ…」
呆れたように呟く智光の愚痴をスルーして、俺はゲーム内に意識を集中させた。
結局その日は、夜になって智光が渋々帰るまで、俺の独壇場だったような気がする。
だが中盤までは進んだので良しとする。
今日は徹夜するとして、このペースでいけば余裕を持ってクリア出来てしまうだろう。
「…そういえば、また返すのを忘れたな」
智光に借りっぱなしにしていたゲームの山が視界に入って、思い出す。
そろそろいい加減に返さなくては。でもそこまで催促されてはいないし…いや、されたような気もしなくもないが。
まあ、次の機会で良いか。
自己解決したところで、俺はまた画面に視線を戻し、ゲームを再開し始めた。
今回のゲームも返すのを忘れて、いい加減にしろと智光にキレられるのは、また別の話だ。
*
冬に書いたものでした。秀吉は基本他人に関心ないだけなんです…たぶんw
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