一次創作絵・文サイト。まったりグダグダやっとります。腐要素、その他諸々ご注意を。
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そそれは、何の変哲もない、放課後に突如として起こった事件。
「ともちゃーんたーすけてー」
「うわっ、ぷ」
それはもう、酷い棒読み具合の担任、相川が智光に飛びついた。
「助けて」などとぬかす割には、その手は智光の髪をぐしゃぐしゃとかき回して遊んでいる。
これが、仮にも助けを求める者のすることだろうか。
ぴくりと片眉を上げて、眉間に皺が寄ったまま、智光は問う。
「何があったんすか、先生」
ずり落ちそうになっていた黒縁の眼鏡を上げてから、相川は無表情で、逆に問うてくる。
「貴臣くんにキレられました。さて、どうしたら良いでしょうか」
「知らねーよ…つーか、あいつがキレるって、ほんと何したんすか」
「なんだ、その…。この前借りたゲームのセーブデータ上書きしちまってよ……」
「土下座だな」
「いや、ほら、俺、これでも教師だからさ。確かに俺が悪かったけど、生徒にそれは」
「土下座だな」
相川が言い終わるのを待たずに、2回目を言った。
1回目より、「土下座」の部分を強調して。
相川の言いたいことはもちろんわかる。自分が悪いとは言え、教師が生徒に土下座など、あるまじきことだ。
どうしても、どうしてもそれをしなければ収まらないとでもいうのなら、それも一つの策かもしれない。
だが、平和的な解決が出来るのなら、それ以上望むことはない。
もしも自分が相川の立場だったらと考えれば、それは尚更だ。
「俺も一緒に謝ってやるから。大人しく出頭しますか。ほら、あいつマジで鬼だから」
「おう……」
苦い顔をして腕を組む相川の肩を叩き、促した。
相川は着ていたジャージの上着を頭にかぶり、ニュースでよくある光景の真似をしながら、教室を出る。
しばらく探しても見つからなかった為、こうなればあそこしかないと部室に向かった。
仁王像か、お前は。そんなツッコミを心の中でしてしまうくらい、威厳のある物体、もとい秀吉が部屋の真ん中で、パイプ椅子に座っていた。
仁王像。じゃない、秀吉の鋭い双眸で睨まれ、背中が真っ直ぐになる。
「何の用だ……」
地を這うような声に、ぞくりと鳥肌が立つ。
この世に「だいまおう」が存在するのなら、きっとこいつだな。
しかも、最強装備の勇者パーティーを1ターン目でぜんめつさせてしまうような。
だが意外にも、そんな謎の威圧感を醸し出しているというのに、秀吉の体勢は、燃え尽きたボクサーのようだった。
魂が抜けている。とでも言い表した方がわかりやすいか。
宙を仰ぎ、秀吉のいる空間だけ白いように見える。いや、実際には見えてないけど。
そんな悲惨な状況で、言葉を失う相川の背中を押す。
「え、えっとぉ。いやぁ、ほら、先生は、君にだね、非常に申し訳ないことを……」
ストレートに言わないと、と耳打ちをするが、むくりと上半身を起こした秀吉に二人とも目がいってしまう。
「ああ……あれか……。別に、もう気にしていない……」
ホッとするのも束の間、虚ろな瞳の秀吉の口端が、弱々しくつり上がる。
「ひたすらに素材集めの旅に出……せっかく、討伐……あれだけの時間を費やして……」
未練タラッタラじゃねーか!無理して気にしてないとか言うなよ!
ぼそぼそと愚痴りながら、秀吉の脚はガクガクと小刻みに揺れ始める。
いや、そんなに?貧乏揺すりするほど?
確かに自分、または他人のミスでデータ抹消、なんてことは少なくない智光だったが、そこまで落ち込むなんて一度もなかった。
秀吉は精神的にもとても強い(というか、気にしてないだけなんだろうけど)人間だと思っていただけに、そんな意外な姿を目の当たりにし、ぽかんと開口してしまう。
隣を見れば、こうなった元凶である相川はあたふたとして、役に立ちそうにないし。
仕方ない、こうなれば俺が。智光がその場に正座し、両手を床につけ、正に頭を下げようという、その瞬間だった。
「あ」
頭を抱えそうになっていた秀吉が、なんとも気の抜けた声をあげた。
思わず「え?」と聞き返してしまう。
「いや、今思い出した。もう大丈夫だ」
「な、何がだよ」
先ほどまでの邪神でも呼び出しそうなオーラはどこへ行ったのか。
清々しい顔で、秀吉が言い放つ。
「俺としたことが、勘違いしていた。あれ、お前に借りた分のソフトだった。俺は先日中古で買ったから用済みだったんだ」
「うん、そういえばそうだった」と、一人で納得した秀吉は、爽やかな笑みを浮かべている。
よくよく思い返せば、確かにそのゲームは、秀吉に貸したことがあった。
それも、"借りる"と言う名目で実際にはパクられている真っ最中である。だいぶ前のことだから、自分でも記憶から薄れていたが。
秀吉の笑みの何がイライラするかって、それじゃあお前は、友人に借りたものを返すことなくそのまま他人に貸したのかと。
罪悪感は無いのかと。つーか、結局気に入って自分用買うくらいなら、用済み呼ばわりせずにとっとと返せよ!と。
一気に不満を畳み掛けて飯を奢らせるくらいはいつでも出来るだろうが、それよりも智光は今回の騒動の結論を考えていた。
ということは、だ。
秀吉のデータは無事だった。
俺のデータは?
ん?
…………。
現実が追いつくまで、数十秒。
「芳政ァァアアア!!!!」
相川が担任教師だということも綺麗さっぱり忘れた智光の、荒い怒鳴り声が部室にこだました。
*
秀吉が嘆いてたのはきっとモンスターをハントするゲーム(笑)
「ともちゃーんたーすけてー」
「うわっ、ぷ」
それはもう、酷い棒読み具合の担任、相川が智光に飛びついた。
「助けて」などとぬかす割には、その手は智光の髪をぐしゃぐしゃとかき回して遊んでいる。
これが、仮にも助けを求める者のすることだろうか。
ぴくりと片眉を上げて、眉間に皺が寄ったまま、智光は問う。
「何があったんすか、先生」
ずり落ちそうになっていた黒縁の眼鏡を上げてから、相川は無表情で、逆に問うてくる。
「貴臣くんにキレられました。さて、どうしたら良いでしょうか」
「知らねーよ…つーか、あいつがキレるって、ほんと何したんすか」
「なんだ、その…。この前借りたゲームのセーブデータ上書きしちまってよ……」
「土下座だな」
「いや、ほら、俺、これでも教師だからさ。確かに俺が悪かったけど、生徒にそれは」
「土下座だな」
相川が言い終わるのを待たずに、2回目を言った。
1回目より、「土下座」の部分を強調して。
相川の言いたいことはもちろんわかる。自分が悪いとは言え、教師が生徒に土下座など、あるまじきことだ。
どうしても、どうしてもそれをしなければ収まらないとでもいうのなら、それも一つの策かもしれない。
だが、平和的な解決が出来るのなら、それ以上望むことはない。
もしも自分が相川の立場だったらと考えれば、それは尚更だ。
「俺も一緒に謝ってやるから。大人しく出頭しますか。ほら、あいつマジで鬼だから」
「おう……」
苦い顔をして腕を組む相川の肩を叩き、促した。
相川は着ていたジャージの上着を頭にかぶり、ニュースでよくある光景の真似をしながら、教室を出る。
しばらく探しても見つからなかった為、こうなればあそこしかないと部室に向かった。
仁王像か、お前は。そんなツッコミを心の中でしてしまうくらい、威厳のある物体、もとい秀吉が部屋の真ん中で、パイプ椅子に座っていた。
仁王像。じゃない、秀吉の鋭い双眸で睨まれ、背中が真っ直ぐになる。
「何の用だ……」
地を這うような声に、ぞくりと鳥肌が立つ。
この世に「だいまおう」が存在するのなら、きっとこいつだな。
しかも、最強装備の勇者パーティーを1ターン目でぜんめつさせてしまうような。
だが意外にも、そんな謎の威圧感を醸し出しているというのに、秀吉の体勢は、燃え尽きたボクサーのようだった。
魂が抜けている。とでも言い表した方がわかりやすいか。
宙を仰ぎ、秀吉のいる空間だけ白いように見える。いや、実際には見えてないけど。
そんな悲惨な状況で、言葉を失う相川の背中を押す。
「え、えっとぉ。いやぁ、ほら、先生は、君にだね、非常に申し訳ないことを……」
ストレートに言わないと、と耳打ちをするが、むくりと上半身を起こした秀吉に二人とも目がいってしまう。
「ああ……あれか……。別に、もう気にしていない……」
ホッとするのも束の間、虚ろな瞳の秀吉の口端が、弱々しくつり上がる。
「ひたすらに素材集めの旅に出……せっかく、討伐……あれだけの時間を費やして……」
未練タラッタラじゃねーか!無理して気にしてないとか言うなよ!
ぼそぼそと愚痴りながら、秀吉の脚はガクガクと小刻みに揺れ始める。
いや、そんなに?貧乏揺すりするほど?
確かに自分、または他人のミスでデータ抹消、なんてことは少なくない智光だったが、そこまで落ち込むなんて一度もなかった。
秀吉は精神的にもとても強い(というか、気にしてないだけなんだろうけど)人間だと思っていただけに、そんな意外な姿を目の当たりにし、ぽかんと開口してしまう。
隣を見れば、こうなった元凶である相川はあたふたとして、役に立ちそうにないし。
仕方ない、こうなれば俺が。智光がその場に正座し、両手を床につけ、正に頭を下げようという、その瞬間だった。
「あ」
頭を抱えそうになっていた秀吉が、なんとも気の抜けた声をあげた。
思わず「え?」と聞き返してしまう。
「いや、今思い出した。もう大丈夫だ」
「な、何がだよ」
先ほどまでの邪神でも呼び出しそうなオーラはどこへ行ったのか。
清々しい顔で、秀吉が言い放つ。
「俺としたことが、勘違いしていた。あれ、お前に借りた分のソフトだった。俺は先日中古で買ったから用済みだったんだ」
「うん、そういえばそうだった」と、一人で納得した秀吉は、爽やかな笑みを浮かべている。
よくよく思い返せば、確かにそのゲームは、秀吉に貸したことがあった。
それも、"借りる"と言う名目で実際にはパクられている真っ最中である。だいぶ前のことだから、自分でも記憶から薄れていたが。
秀吉の笑みの何がイライラするかって、それじゃあお前は、友人に借りたものを返すことなくそのまま他人に貸したのかと。
罪悪感は無いのかと。つーか、結局気に入って自分用買うくらいなら、用済み呼ばわりせずにとっとと返せよ!と。
一気に不満を畳み掛けて飯を奢らせるくらいはいつでも出来るだろうが、それよりも智光は今回の騒動の結論を考えていた。
ということは、だ。
秀吉のデータは無事だった。
俺のデータは?
ん?
…………。
現実が追いつくまで、数十秒。
「芳政ァァアアア!!!!」
相川が担任教師だということも綺麗さっぱり忘れた智光の、荒い怒鳴り声が部室にこだました。
*
秀吉が嘆いてたのはきっとモンスターをハントするゲーム(笑)
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