忍者ブログ
一次創作絵・文サイト。まったりグダグダやっとります。腐要素、その他諸々ご注意を。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「トリックオアトリート!」
クオリティーの低い吸血鬼の仮装をした一馬が家の前にいると聞き、司は渋々玄関を開けながら深いため息を吐いた。
にこにこと期待に膨らませた笑みを湛え、一馬は当然のように両手を差し出している。
さっさと菓子をくれ、と言うことか。
「私は便乗しないぞ」
「え~つまんないこと言わないで下さいよぉ!お・菓・子!くれないと悪戯しちゃうよ?」
「やってみろ。絶対に許さない」
一馬の手を払いのけながら凄めば、一馬は不服そうに唇を尖らせる。
「ケッ、西條先輩は空気読んですぐくれたのに」
「…西條の所にも行ったのか?」
「つーか俺いま、先輩やダチの家回ってるんすよ」
まったくこいつは、何を遊び歩いているんだ…。司は呆れて宙を仰ぐ。
「どうやら、何か一つでもやらんと帰ってくれないようだな」
「そゆこと!」
「…仕方ない。ちょっと待っていろ」
そう言って、司は一度自宅の中に戻って行く。
すぐに帰って来たかと思うと、差し出された手の平に色とりどりの小さなものを落とす。
「ほら、これで良いな」
手渡されたものを見て、一馬は一瞬、手の平の中の菓子を二度見した。
テレビの中や、田舎に住んでいる祖母が食べているのを見たことがある程度の知識しかない菓子だった。
「なんすか…これ…」
「見てわからないか。こんぺいとうだ」
「いや、先輩…違う…菓子って言ったらもっとこう…」
「これも立派な菓子だ。じゃあな」
「あっ、ち、ちょっと待てよ!」
そそくさと玄関を閉めようとするが、一馬が脚を入れてそれを制止する。
「うるさい!早く帰れ!!」
とどめに顔に缶を投げられ、一馬は傷めた額を摩りながら地面に落ちた缶に目を向ける。
宝石のような形をしたその飴もテレビや駄菓子屋でしか見たことのないものであった。
「先輩古っ!つかダサッ!今時こんなのリアルに食う若者なんて先輩しかいねーよ!だから脳みそまでガチガチなんだよ!!」
その言葉が、司のプライドを傷付けた。
「なっ…ひ、人の食生活にまで口を出すな馬鹿者がっ!!」
強引に一馬を跳ね退け、バタンと音を立てて扉を閉めた。
後に残された一馬は、不服そうに無言で扉を見つめていた。
握り締めていたせいでベタベタになったこんぺいとうに目をやると、自棄になって口の中に押し込める。
「甘゛ッ……」
もうハロウィンに如月先輩の家にだけは行かない。自分の知らないところで、司は一馬にそう誓わせた。
PR
この記事にコメントする
           
お名前
タイトル
メール(非公開)
URL
文字色
絵文字 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメント
パスワード   コメント編集に必要です
 管理人のみ閲覧
この記事へのトラックバック
トラックバックURL:
フリーエリア
pixiv/メルマガ
最新コメント
[09/28 篠崎]
最新記事
バーコード
ブログ内検索
最古記事
Copyright ©  -- 月下香 --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Material by White Board

powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]