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一次創作絵・文サイト。まったりグダグダやっとります。腐要素、その他諸々ご注意を。
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闇金融。表の金融機関ではどうしようもなくなったいわゆる“負け組”が藁にも縋る思いで再起を計ろうと金を借りに来る場所。
だが、その金を違法な高金利で貸し付け、やがて最後の一滴まで搾り取る彼らの仕事を、人はそう呼ぶ。
繁華街にあると言う割にはあまり目立たない、都内の雑居ビル。
義之はそのワンフロアにある事務所にいた。
「ちぇっ…ったく、生きにくい世の中になったもんだな…」
キャスター付きの椅子に座り、くるくると回りながら、事務所の小さなテレビから流れてくる暗いニュースに義之は不満を零す。
そんな自堕落な姿を見て、最奥のデスクで資料に目を通していた男が、ムッと眉間に皺を寄せる。
「愚痴る暇があるならとっとと仕事しろ。お前の担当の会社員はどうなったんだ?」
厳つい顔面の、見るからにそれらしい男。
彼も義之と同じヤクザで、血の繋がった兄であった。名前は和之と言う。
和之は長男であり、その間には、母がオーナーとして君臨するホストクラブで店長を務める次男の浩之がいる。
デスクに居ないところを見ると、今は仮眠室で休んでいるのだろう。
この会社は柳兄弟が筆頭になって経営し、バックに龍真組がいるのを良いことに更に下の闇金業者をも統括していた。
もっとも、その強大な組織…蓮見・柳の家の名を越えて絶対服従の意を見せる男がいることは兄達も知らない。
紅い館を仕切るその男の冷たい眼光だけは、恐れ知らずな義之が唯一、未だ恐怖で四六時中忘れられないものである。
義之は暇そうにデスクの上に両脚を放り出す。
「それがよォ、ギャンブルで金増やそうっつう典型的なクズ。一円も回収できずに自殺されるよりはとっとと労働させた方が良いと思うんだけどよ…」
「時期尚早だ。かき集められるだけかき集めさせてからでも問題ないだろ。ま、死にそうになったらその時はお前に任せる」
和之は資料から目を逸らすことなく、淡々と言った。
兄二人は大学を出ているが義之だけは高校もあまり行かなかったようなもので、実質的には中学を卒業した頃から家業を率先して手伝っている。
キャリアで言えば兄弟の中でも群を抜いているのだが…あいにくこの三男、些細なことで感情的になりやすく頭が回らない、要するに…馬鹿だったのだ。
「簡単に言いやがって…実際に汚れ仕事してんのはオレなんだぜ?現場を知ってる者の言うこと聞いて悪いこたぁねぇと思うがな?あ?」
「…気持ちは解るが、闇金もヤクザも、日に日に厳しくなってんだ。俺はお前に、少しは自分の立場を弁えろと…」
「知るか!要はパクられなきゃ良いんだろうが!大体、カズ兄のやり方はいつも生温ィんだよ。オレだったらなぁ…!」
義之一人がぎゃあぎゃあと騒ぎながら口論していると、浩之が起きてしまったらしい。
眠い目を擦りながらデスクへやって来る。
「なに揉めてんの…ふわぁ…こちとら徹夜明けだってのに…」
「この馬鹿が勝手に喚いてるだけだ、すまん」
「馬鹿言うなバーカ!ヒロ兄も毎日毎日、汚いババア喜ばせて何が楽しいんだ?ホストと家とどっちが大事なんだよ」
「ん~…ホスト?」
なんとも楽観的な浩之の言葉に、義之はがっくりと肩を落とす。
浩之は凝った肩を片手で揉みほぐしながら、面倒そうに言う。
「義之なんて放っておいて平気だよ。将来的にうちはカズが継ぐだろ?今のところあんたが最有力だし」
「あんまり俺を頼るな…。この先、何があるかまだわからないだろうが」
「そーそー。カズ兄がぽっくり死んでオレが継ぐことになるかもしれねぇだろ」
「縁起でもないこと言うんじゃねえよ!」
「恭一坊ちゃんに何と報告したものか…ってやつだね。ぷぷっ」
義之の戯言に和之がキレ、そんな二人を近くで眺める浩之。これが柳兄弟の日常だった。
その時、義之の携帯が場違いとも言える壮大な音楽を奏で始めた。
有名なSF映画の悪役のBGMを着信音にしており、それだけで義之には誰からの着信かが解った。
ディスプレイに表示された“桐島さん”の文字を一睨みすると、義之はわざと大袈裟な態度で電話に出る。
「は、はいはーい!ああ、今っすか?大丈夫っす、全然暇っす!!」
「おい、そんなに暇なら仕事し…」
和之の小言も聞かず、電話に耳を傾ける。
修介の用件は、すぐに館へ来いという内容だった。しかもそれは、義之が好み、集中出来そうな仕事であった。
最初こそ拒絶していたことなどとうに忘れた義之は、満面の笑みで正に理想の上司だ…と痛感していた。
「はい、今から行きます!!ありがとうございます!!」
電話を切ると、早速鼻歌交じりに身なりを整え始める。
「…ったく、誰からの電話だ?随分嬉しそうだな」
「あ、わかった彼氏?」
「へっ、テメェら負け犬には教えてやんねー。いや、ちげーな、負け猫か?にゃんにゃん。ブハハッ」
真顔で手元の資料を落とす和之と、へらへらとした笑みを凍りつかせる浩之。
二人の兄に追いかけられる前に、義之は上機嫌で事務所を出て行った。
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