一次創作絵・文サイト。まったりグダグダやっとります。腐要素、その他諸々ご注意を。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
テスト期間というものは、生徒よりむしろ教師の方が忙しいのではないかと思う。
勉強嫌いな者は、期間中の空き時間を遊びに使ってしまうのだし。
既にテストは終わり、今日は結果発表の日。
成績は廊下に張り出され、今回も上位は常連ばかりだ。
だが、その中でも廊下に集まった生徒たちから称賛され、黄色い声を浴び、嫉妬の目で睨まれていたのは、クラスどころか学年で一位の“彼”だ。
今や進学校としても認知度の高い学園内で醜い成績争いの日々を送っている訳だが、努力の甲斐あってか常にトップを保持している。その努力を知らない者には冷たい人間だと言われているらしいが、鷲尾は彼が無情だとは思えなかった。
そんなことを考えながら、いつものようにプリントを作成していると――
「鷲尾先生」
落ち着き払ってはいるが棘のある声で呼ばれ、鷲尾はやっと問題の“彼”、如月司が隣に立っていることに気付いた。
「ああ…如月くん。どうしたんだ?」
「ここの問題、訂正してください」
子供に好かれそうな笑顔で向き直る国語教師の鷲尾を完全に無視し、司は苛ついた様子でデスクに何かを、叩きつける。
訳もわからず、視線を落とす。一枚の解答用紙だ。
氏名の欄には、如月司と神経質そうな文字で書かれている。
怪訝に思いながら用紙を手に取ってみる。
惜しいことに、一問だけ、たった一問だけが間違ったものだ。
訂正って…どういうことだ?これの、どこを…?
「あ……」
教師用の、正しい解答用紙と照らし合わせてみて、初めて気付く。正解であるはずの問題を、誤って間違いだとしてしまっていたのだ。
採点をしたのは紛れも無い、国語担当の自分。
確かこの頃は、テストの採点作業に追われていたことは覚えているが…司と同じく神経質な部分がある鷲尾にとっては、あるまじき失態だ。
「俺のミスだ。今すぐ直すよ」
「やはりか…。まったく、私がこの程度の問題を間違えるとでも?」
…この偉そうな態度さえなければとは時たま思うが、学園には困った人間が多いだけあって既に慣れている。
「如月くん」
「なんですか?」
「はい。本当によく出来たね」
すぐに訂正した解答用紙を、鷲尾は微笑みながら手渡した。
さも当然だという顔でそれを受け取った司だったが、用紙を確認すると目を丸くする。
そこには、「よくできました」と、小学生くらいまでしか見ないであろう、はなまるのスタンプ。
司の顔が、みるみる内に赤くなっていく。
「こ、こんな…父には見せられない…っ」
「そうかな?」
「ふざけないで下さい!」
悪戯っ子のように笑う鷲尾に、司が声を荒げる。
「その方が、可愛いと思ったんだけど。君が頑張っていることも一目瞭然じゃないか」
「そういう問題じゃ…!…はぁ…もう、いいです…ありがとうございました…」
真顔で言い放った鷲尾にこれ以上言っても無駄だと悟ったか、司の声はフェードアウトした。
この教師はなんてことをするんだ、そんな呆れ顔だ。消化不良な姿を見て再び笑いが込み上げ、司に睨まれる。
「またなにかあったらすぐ来いよー」
「っ…もう来ません!失礼しました!」
「間違ったままの方が良かった」などと小言を呟きながら職員室を出て行く司を眺め、鷲尾は忙しくも充実した日々を感じていた。
勉強嫌いな者は、期間中の空き時間を遊びに使ってしまうのだし。
既にテストは終わり、今日は結果発表の日。
成績は廊下に張り出され、今回も上位は常連ばかりだ。
だが、その中でも廊下に集まった生徒たちから称賛され、黄色い声を浴び、嫉妬の目で睨まれていたのは、クラスどころか学年で一位の“彼”だ。
今や進学校としても認知度の高い学園内で醜い成績争いの日々を送っている訳だが、努力の甲斐あってか常にトップを保持している。その努力を知らない者には冷たい人間だと言われているらしいが、鷲尾は彼が無情だとは思えなかった。
そんなことを考えながら、いつものようにプリントを作成していると――
「鷲尾先生」
落ち着き払ってはいるが棘のある声で呼ばれ、鷲尾はやっと問題の“彼”、如月司が隣に立っていることに気付いた。
「ああ…如月くん。どうしたんだ?」
「ここの問題、訂正してください」
子供に好かれそうな笑顔で向き直る国語教師の鷲尾を完全に無視し、司は苛ついた様子でデスクに何かを、叩きつける。
訳もわからず、視線を落とす。一枚の解答用紙だ。
氏名の欄には、如月司と神経質そうな文字で書かれている。
怪訝に思いながら用紙を手に取ってみる。
惜しいことに、一問だけ、たった一問だけが間違ったものだ。
訂正って…どういうことだ?これの、どこを…?
「あ……」
教師用の、正しい解答用紙と照らし合わせてみて、初めて気付く。正解であるはずの問題を、誤って間違いだとしてしまっていたのだ。
採点をしたのは紛れも無い、国語担当の自分。
確かこの頃は、テストの採点作業に追われていたことは覚えているが…司と同じく神経質な部分がある鷲尾にとっては、あるまじき失態だ。
「俺のミスだ。今すぐ直すよ」
「やはりか…。まったく、私がこの程度の問題を間違えるとでも?」
…この偉そうな態度さえなければとは時たま思うが、学園には困った人間が多いだけあって既に慣れている。
「如月くん」
「なんですか?」
「はい。本当によく出来たね」
すぐに訂正した解答用紙を、鷲尾は微笑みながら手渡した。
さも当然だという顔でそれを受け取った司だったが、用紙を確認すると目を丸くする。
そこには、「よくできました」と、小学生くらいまでしか見ないであろう、はなまるのスタンプ。
司の顔が、みるみる内に赤くなっていく。
「こ、こんな…父には見せられない…っ」
「そうかな?」
「ふざけないで下さい!」
悪戯っ子のように笑う鷲尾に、司が声を荒げる。
「その方が、可愛いと思ったんだけど。君が頑張っていることも一目瞭然じゃないか」
「そういう問題じゃ…!…はぁ…もう、いいです…ありがとうございました…」
真顔で言い放った鷲尾にこれ以上言っても無駄だと悟ったか、司の声はフェードアウトした。
この教師はなんてことをするんだ、そんな呆れ顔だ。消化不良な姿を見て再び笑いが込み上げ、司に睨まれる。
「またなにかあったらすぐ来いよー」
「っ…もう来ません!失礼しました!」
「間違ったままの方が良かった」などと小言を呟きながら職員室を出て行く司を眺め、鷲尾は忙しくも充実した日々を感じていた。
PR
この記事にコメントする
この記事へのトラックバック
トラックバックURL:
カテゴリー
ブログ内検索