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朝。学園の教室棟では、しきりに「誕生日おめでとう」という言葉が飛び交っていた。
「おう、ありがとー。ホントありがとうな」
温かい祝福にはにかみながら、西條隼人はひらひらと手をふる。
今日は隼人の生まれた日であった。学年関係なく交友のある隼人には、そんな風に祝ってくれる友人も女子のファンも多い。
そうして自身の幸せを噛み締めながら廊下を歩いていると、特に今日だけは、最も会いたくなかった人物が視界に入る。
「…フン、良いご身分だな」
すれ違いざまに、小さな声だったが確かにそう聞こえた。
「誕生日くらい良いじゃないか!嫌味男!」
咄嗟にそう返してみても嫌味の塊のような彼、幼なじみである如月司はこちらを振り返りもせず立ち去ってしまう。
…やっぱり司は苦手だ。人を偏見だけで判断してはいけないと解っている隼人だが、何故だか司とは幼い頃から気が合わない。それ以前に、仲良くしたいという気持ちが湧かないのだ。
多分、これが生理的に無理というやつなのだろう。
そりゃあ幼なじみなんだから誕生日くらいは互いに知っているとはいえ、わざわざ嫌味を言わなくたって。
お祭り気分が総崩れしていくのを感じながら、深いため息を吐いた。

「…平井さん。えっと…どうも」
校門前で紳士的な男に呼び止められたのは、その日の放課後だった。
平井は司の送迎をしている専属運転手であり、司が実の両親よりも信頼していそうなイメージを持っている。
笑顔で会釈をする平井に、隼人も慌てて頭を下げる。
「司様はもうしばらく掛かりそうですか?」
「んー…確か生徒会の会議とかで…遅くなると思いますよ」
司のことなんかオレに聞くなって!と内心いらつく隼人に、平井は真面目そうな顔をくしゃっと歪めて微笑む。
「そうですか…。それより隼人様、今日がお誕生日だそうで。おめでとうございます」
「…はぁ。ありがとうございます」
「あのう、これ…司様には黙っていろと言われたのですが…司様からのプレゼントです」
「ありが…えっ!司から!?」
差し出された紙袋を受け取りながら、隼人は思わず声高らかに叫んだ。
まさか犬猿の仲である彼が自分の為に贈り物を用意するなんて、天地がひっくり返ってもありえないとだと思い込んでいたからである。
いやでも、オレがぬか喜びする姿が見たいのかもしれない。あいつはそういう奴だ。
顔を引きつらせながら恐る恐る紙袋の中に手を突っ込み、中身を出してみる。
「……ラケット?」
「はい。隼人様が、本格的にテニスを習いたいとご友人に話していたからだと聞きましたが」
他にも有名ブランドのウェアやシューズ、ボールなど、アイテム一式が詰められていた。
確かにそんな話をしていたことはあるし、授業で経験してから趣味でも習いたいと思うようになったスポーツでもあったが…それを気に掛けていてくれたとは。
驚きの連続に混乱寸前の隼人に対し、平井はこう言った。
「きっと、自分と対等な立場で手合わせして欲しい…という司様のお気持ちでしょうね。スポーツは勝ち負けだけでありませんから。いやはや、なかなか感情の伝え方が下手な司様ですが…これからも宜しくお願い致しますね」
深々と頭を下げられた。
どんな反応をしていいのかわからず困っていると、再び隼人の視界に、話の張本人が入る。
「…っ!!平井!!」
その場の状況を察し、今にも平井の胸倉を掴みそうな司。申し訳なさそうに笑う平井。
「まあ、なんだ、その…ありがとうな」
平井を押しのけ、早々に車へ駆け込もうとしていた司の足が止まる。
「……勘違いするな。ただの借しだ。何かあった時には働いてもらうからな」
相変わらずのぶっきらぼうではあったものの、隼人には司の悪意は感じられなかった。
苦笑しながら一言謝って、平井も司の後に続いて車へ乗り込んだ。
隼人は一人、紙袋を持ってその場に残される。
「ああ、もう、司に借り作るとかありえねー…こわっ!」
去って行く車を見つめて悪態をつく隼人だったが、不思議とその表情は穏やかだった。
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